ブロックチェーンが可能にする「法定デジタル通貨」
30年間でお金はこんなに変わった〈後編〉
特集「2040年のモノ」。ここでは、現代人の「生活必需品」としても名前があがり、我々が生きていくうえで切っても切れない存在である「お金」を考える。不変のものと思われるお金も、わたしたちが生まれてから今に至るまで、“形”は徐々に変化、進化をとげている。ここ数十年の「電子化」の流れを振り返ってみよう。〈前編『「電子マネー」あなたはいつから使い始めた?』につづく後編〉
■時代の一歩先を行っていたシンガポール
いまから18年前、いちはやく通貨の電子化をすすめようとした国があった。シンガポールは2000年、シンガポールの通貨発行主体である「シンガポール通貨理事会」が「2008年までに電子現金(※電子マネーと区別するために電子現金と表記)を法定通貨にする」というプロジェクトを発表したのである。日本でいえば、「日本銀行が紙幣や硬貨をやめ、円はデジタルで発行します」というようなものだ。
結局、このプロジェクトは成功することなく終わってしまった。このときに大きなネックとなったのが、導入コストである。シンガポールでは電子現金をICカード型の電子マネーとして想定していたが、決済場面ではICカードを読み取るリーダー端末が必要だ。日本ではSuicaのリーダー端末は民間企業が普及させているが、法定通貨となると国がリーダー端末の導入コストを負担しなければならない。シンガポールは東京23区より少し大きいくらいの面積ではあるが、それでも国中にリーダー端末を設置するには莫大な費用がかかる。金銭的に折り合いがつかず結果的に、プロジェクトは断念することになってしまった。